民法改正による事業資金借入の保証人保護

改正された民法では、「事業のために負担した貸金等の債務を主たる債務とする保証契約」

又は「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等の債務が含まれている根保証契約」

について、個人が保証人になる場合、その個人が契約締結日前1か月以内に作成された公正

証書で保証債務を履行する意思を表示していなければその保証契約は無効とされました。

ただし、この規定の例外として、主たる債務者が法人の場合は、その法人の理事、取締役、

執行役、法人の支配株主、これらに準ずる者①

主たる債務者が個人事業主の場合は、主たる債務者の共同事業者や主たる債務者の事業に

現に従事している主たる債務者の配偶者②

①②の者が保証人となる場合は、公正証書の作成を不要とされています。

つまり、会社の代表者を保証人にとる場合は、公証人による保証意思の確認手続きは不要

ということになります。事業に関係ない第三者を保証人にする場合にこの手続きが必要と

いうことです。

実務上は、経営者やそれに準じる者以外の者を保証人とする場合に該当するか、それとも

例外に該当するか確信が持てない場合は、公正証書を作成しておくのが最も安全な対応と

言えそうです。

 

障害のある子のための家族信託2

相談者(仮に甲さんとします)は、現在75歳です。

主な資産として自宅と賃貸アパート、預金を有しています。

配偶者は既に亡くなっており、近所に住む長女と同居する長男がいます。長男は障害を

持っています。

甲さんは、近頃高齢のためか、賃貸アパートの管理が難しく感じられます。それに加え、

自分亡き後の長男のことが気がかりです。

甲さんは、自分が死んだあとも長男には賃貸アパートの収益で生活をし、自宅にも住み

続けてほしいと希望しています。

また、甲さんが認知症で施設に入居する場合や甲さん亡き後長男が施設に入居しなけれ

ばならない場合には、自宅を売却して入居費用に充てることも考えています。

もしもの時に備えて今後は、長女に賃貸アパートの管理や自宅の売却などをまかせたい

と考えています。

このような甲さんの希望は、家族信託を活用することで解決できます。

甲さんが、委託者兼当初の受益者として、長女との間で長女を受託者とする信託契約を

結び、自宅と賃貸アパートこれらの不動産管理に必要な範囲の金銭を受託者に移転させ

信託スタートです。

信託の目的は、受益者である甲さんの安定した生活の支援と甲さん死亡後次の受益者で

ある長男の財産管理の負担を無くして安定した生活を支援することです。

受益者は、自宅で居住を続けることや賃貸アパートの賃料収入から配当を受け取ったり

信託財産処分時の対価を受け取ることができます。

このように甲さんは、家族信託を利用することで希望に叶う財産の利用・管理・収益を

図りつつ、将来の認知症等による判断力低下や死亡にかかわらず、信託した財産の管理

を継続することができます。

 

高齢者と不動産売買契約締結時の注意点

高齢化社会の進展に伴い、認知症の疑いがある高齢者と不動産売買契約を締結

する際の注意点について相談を受けることが増えました。

意思能力のない者の法律行為は無効となりますが、このリスクは取引の相手方

が負うことになります。

そのため、このようなケースでは、家庭裁判所の選任した成年後見人との間で

契約を締結します。しかし、高齢者のご家族の立場からすると不動産売買契約

のためだけにわざわざ家庭裁判所への面倒な手続きはしたくない、と言われる

ことが多いです。

ところが、実際の不動産取引では、決済時に司法書士が契約当事者の本人確認

と売却について本人の意思確認を行い、それらを確認できなければ登記を実行

しません。

よくある事例は、不動産を所有する高齢の父親が事理弁識能力(以下「判断力」

とします)を有していたときに長男に対し不動産売却の旨を委任し自筆の委任状

を用意しているケースがあります。このようなケースであっても、売買契約締結

の時点で本人の判断力を欠いている常況にあるのであれば、やはり成年後見人を

選任のうえ、契約を締結する必要があります。

たとえ、委任状に実印が押印されていても本人の意思能力が売買契約締結の時点

で存在しなければなりません。

このケースでは、判断力のあるうちに委任状を用意するのでなく家族信託の設定

をしておくと解決できます。

まず、父親と長男とで売却予定の不動産を信託する家族信託契約を締結します。

信託契約では、例えば、父親が将来施設に入居して自宅が空き家になったら売却

するという内容にします。自宅の名義は、信託財産として長男に移転しますが、

売却代金の受取りは父親です。信託財産のため、売買契約は、長男が一人ででき

ますし、仮に父親が契約時に判断力がなくなっていてもそれは可能です。売却に

あたり、裁判所の許可も必要ありません。

自宅の売却代金は、父親の収入になりますが、これについても家族信託で長男に

管理させることができます。長男は、ここから父親の生活費や施設の費用などを

支払うことができます。財産管理のための、成年後見人も必要ではありません。

このように家族信託では、事前に信頼できる人に財産を託すことで自分の判断力

がなくなった後でも自宅の売却が問題なく可能となります。

家族信託は、元気なうちに利用することで自分の財産を将来認知症になったり、

亡くなった後も希望通りに使えるようにするための制度です。

 

 

 

遺産承継手続き

被相続人の相続財産を調査・確定し、相続人間の遺産分割協議により各財産の帰属が決まる

と相続人への承継手続きを行うことになります。

遺産承継業務として受託するケースが多いのは、

①預貯金の解約、名義書き換え、債務承継手続きなど金融機関の承継手続き、

②株式の名義書き換え、売却など証券関係の承継手続き、

③相続登記、売却など不動産関係の承継手続き、です。

その他では生命保険金請求手続きや自動車の名義書き換えを依頼されることもありますが

どこまでの範囲を受託するかは、予め依頼者との契約によって明確にします。

なお、遺産承継業務は、完了するまでに他の業務と比較して時間を要する場合があります

し報酬が高額となる場合もありますのでこれらの点をご説明しご納得いただいたたうえで

業務を受託しています。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

年末年始休暇のお知らせ

当事務所は、年内は12月27日まで営業いたします。

12月28日から翌1月5日まで年末年始休暇とさせていただきます。

1月6日(月)9時30分より通常通り執務を開始いたします。

 

 

 

 

事業承継M&Aの方法

M&Aは、一般に企業の合併及び買収を意味しますが、事業承継M&Aの方法には

大きく「株式譲渡」と「事業譲渡」に分類されます。

株式譲渡は、買収される会社(被買収会社)の株式を買収する会社(買収会社)

に譲渡し、対価として現金預金を取得する方法です。この方法は、被買収会社の

法人格をそのまま引き継ぐことになるため、被買収会社の権利義務すべてをその

まま買収会社が取得します。

また、株式譲渡方式によるM&Aは、手間がかからないのがメリットと言われる

ものの、過去の簿外債務も引き継ぐこととなるため、むしろデメリットとなって

しまうこともあります。

次に、事業譲渡は、株式譲渡と違い、被買収会社の法人格を引き継ぐことがない

ため、被買収会社の簿外債務などを引き継がないことができるというメリットが

ありますが、資産や負債、契約関係など個々に承継することから、手続きが煩雑

になりやすいのがデメリットです。そのため、事業譲渡によると手続きが煩雑な

場合は、会社分割の方法をお勧めしています。

なお、事業譲渡によるM&Aは、簿外債務が疑われる場合や小規模企業の買収

に利用される方法と言えます。

 

障害のある子どものための家族信託

わが子に障害があると、親亡き後のことを考え、不安を抱えてしまうものです。

こうした不安に押しつぶされそうになる前に、親ができることがあります。

親亡き後に障害のある子どもが生き抜くために、家族信託が役に立ってくれる

かもしれません。

親の残した財産を障害のある子の世話をしてくれる人に信託します。

例えば、父親がアパートを所有しており、長男に障害があり、長女がこの長男

の面倒を良く見てくれるとします。

このアパートを父親が元気なうちに父親を委託者兼受益者、長女を受託者とし

て信託を設定します。これによりアパートの管理は長女が行いますが、賃料は

父親の収入になります。

仮に、父親が認知症になったとしても長女が管理しているアパートは信託財産

のため影響を受けません。

あらかじめ信託契約で父親が亡くなったら次の受益者を長男と指定しておけば

アパートの賃料を受け取る権利を長男が引き継ぎます。

なお、信託した財産は、父親の他の財産と区別されるため、遺産分割の対象

となりません。

 

 

家族信託で認知症対策

家族信託の相談で特に多いのは認知症対策です。

例えば、「高齢の父が賃貸アパートを経営しているが最近物忘れがひどく認知症が心配だ。

何も対策をしないまま認知症になってしまうと後見人が父のアパートの管理やお金の管理を

することになるが、できればアパートの経営や父の生活費等の支出を家族で管理したい。」

などのご相談は家族信託で解決できます。

この事例では、同居する長男を「受託者」、父を「委託者」兼「受益者」として家族信託

を設定し、長男がアパートの管理を行うようにしました。これでアパートの賃料の管理や

修繕、賃貸借契約など法律上問題なく長男が行えるようになりました。

なお、父は受益者として賃料を受け取れます(受益権といいます)が、この受益権を父が

亡くなったらその妻に、妻が亡くなったら長男に等と指定することもできます。

但し、この家族信託は、認知症等で判断力がなくなると設定できません。

元気なうち事前対策としてご検討いただきたいですね。

 

 

家族信託とは

「家族信託」は、テレビの情報番組などで取り上げられるらしく問い合わせが

増えてきました。

家族信託とは、例えば親子の場合、財産の所有者である親が元気なうちに財産

の名義だけを子に移転し、財産から得られる利益(賃料等)を受け取る権利は

親が持つようにする契約です。

この場合の親は「委託者」兼「受益者」、子は「受託者」といいます。

このような契約を親が元気なうちにすることによって、その後認知症になった

としても変わらず子は財産管理を継続することができるようになります。

自宅を売却する場合は、所有者が認知症になるととても難しくなります。

何も準備をしておかなければ、成年後見人を選任し、裁判所の許可を得て売却

することになります。

裁判所の許可は、得られるとは限りませんから売却できないかもしれません。

これも家族信託で事前に信頼できる家族に託しておけば認知症になった後でも

問題なく自宅の売却ができます。

家族信託では認知症対策以外にも様々な活用法があります。

次回から事例を中心にご説明したいと思います。