前回の続きです。
三つ目は、生命保険の活用です。
相続の生前対策として生命保険を活用する場合、一般的には、契約者と被保険者を親、
受取人を相続人とする一時払い終身保険を活用します。
生命保険は、契約により受取人指定がされているため、遺言と同様に遺産分割協議を
経ることなく特定の人に財産を承継させることができます。しかも、遺言と異なり、
判例は、生命保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割、遺留分侵害額請求の対象
とならないとしています。
また、生命保険には相続税の非課税枠があるため、遺産分割や相続税等の納税対策で
活用することができます。ちなみに、非課税枠は500万円×相続人の数ですので、
相続人2人で生命保険金1000万円なら非課税となります。
ただし、生命保険は、対象財産が金銭のみとなるため、金銭以外の不動産などを対象
とするためには、遺言や家族信託などの制度と併用する必要があります。
次に、四つ目は、成年後見制度です。
成年後見制度は、認知症や知的障害などにより、本人の判断能力が既に低下している
場合に利用する法定後見制度と本人が元気なときに、将来の判断能力の低下に備えて
予め信頼できる人に後見人となることを頼んでおく任意後見制度があります。
どちらの制度も家庭裁判所の監督のもと、本人の生活支援等のために財産管理を行う
制度です。そのため、本人保護が優先される結果、相続対策としての生前贈与や資産
の組換え、生命保険の解約などは原則としてできなくなります。
また、法定後見人には、資産家ほど家族以外の第三者(弁護士や司法書士等の専門職)
が選任されるケースが多く、その場合には財産管理を家族だけで行うことができず、
第三者が本人の通帳などを管理することになります。
そして、成年後見人の報酬は、裁判所が決めますが原則として本人の能力が回復するか
亡くなるまで続くため、月額3万円から6万円が目安となりますが、累計すると高額な
報酬がかかります。
なお、任意後見制度を活用した場合は、本人の信頼できる人に任せることができますが
この場合後見業務をチェックする第三者の任意後見監督人が就任するため、成年後見人
と同様に任意後見監督人の報酬は裁判所が決定します。
以上のように本人の認知症などにより、成年後見制度を利用することになると、本人が
判断能力を回復するか亡くなるまで家族であっても財産の管理や処分が自由にできなく
なります。
五つ目は、家族信託ですが、これは次回にしたいと思います。