遺言を書いたほうが良い理由|司法書士が実例とともにわかりやすく解説

「遺言なんて、自分にはまだ早い」「財産もたいしてないから必要ないかな」と思っていませんか?そうなんですね。実は多くの方がそう感じているのですが、実際に相続が起きてみると、遺言がなかったことで家族が大変な思いをしてしまうケースは少なくありません。
遺言があるだけで、残された家族がずいぶん助かる

「遺言書があるとないとでは大違い」という言葉、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、相続の現場を長く見てきた私たちからすると、これは本当のことです。
遺言書がない場合、亡くなった方の財産は「遺産分割協議」という手続きによって相続人全員で話し合い、分け方を決める必要があります。相続人が仲のよいご家族だとしても、「お父さんはどう考えていたんだろう」「自分だけが多くもらうわけにもいかないし…」という遠慮や気遣いから、話し合いが長引いてしまうことがあるんですね。
一方、遺言書があれば、基本的に遺言の内容に従って手続きを進めることができます。残されたご家族の負担を大きく減らせるのです。
当事務所が実際に扱った「一番シンプルな遺言」

私たちが実際に扱った案件の中で、最もシンプルだった遺言書のお話をさせてください。
その遺言書に書かれていた内容は、「私の とちといえは 妻○○に与える」というものでした。たったこれだけです。ひらがな交じりの短い文章ですが、氏名を含めた全文が自筆で書かれており、日付も日にちまで明記、そして氏名の下にはしっかり押印がありました。
この遺言書は「自筆証書遺言」という形式で作成されており、家庭裁判所での検認手続きを経た後、遺言の内容に従って相続登記(不動産の名義変更)を実行しました。短い文章でも、要件さえ満たしていれば法的に有効な遺言書として機能するのです。いいですね!
ただし、この案件では一つ惜しい点がありました。遺言で指定されていたのは「土地と家(自宅不動産)」だけで、預貯金などその他の財産については何も書かれていなかったのです。その結果、不動産以外の財産については相続人全員による遺産分割協議が必要になりました。せっかく遺言書を書くなら、すべての財産についてきちんと記載しておくことをお勧めします。
遺言書の種類と特徴を比較しよう
遺言書にはいくつかの種類があります。代表的な2つを比較してみましょう。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 全文・日付・氏名を自分で手書き+押印 | 公証役場で公証人が作成 |
| 費用の目安 | ほぼ無料(法務局保管制度利用時は別途費用) | 財産額に応じた公証人手数料が必要 |
| 証人 | 不要 | 証人2名が必要 |
| 保管 | 自己保管または法務局(自筆証書遺言書保管制度) | 公証役場で原本保管 |
| 検認手続き | 原則必要(法務局保管の場合は不要) | 不要 |
| 無効になるリスク | 書き方を誤ると無効になる可能性あり | 公証人が確認するためリスクが低い |
| こんな方に向いている | 手軽に始めたい方・費用を抑えたい方 | 確実性を重視する方・財産が多い方 |
それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが適しているかはご状況によって異なります。慎重に! 選ぶ際はぜひ専門家にご相談ください。
自筆証書遺言は「些細なこと」で無効になる
自筆証書遺言の最大のメリットは、費用をほとんどかけずに手軽に作れることです。しかしその一方で、要件を少しでも欠いてしまうと法的に無効になってしまうリスクがあります。これが自筆証書遺言の難しいところなんですね。
無効になりやすい主なNG例
- 全文自書ではなく、一部をパソコンで作成した(財産目録を除く本文はすべて手書きが必要です)
- 日付が「令和○年○月吉日」など特定できない記載になっている
- 押印が漏れている(認印または実印を使用してください。浸透印・スタンプ式のいわゆるシャチハタは、実務上認められないリスクが高いためお勧めしません)
- 氏名の記載が不完全(ペンネームや通称のみなど)
- 複数枚にわたる場合にページのつながりが証明できない(契印がない)
「ちゃんと書いたつもりなのに無効だった」という相談は、実際に寄せられることがあります。これほどまでに些細なことで無効になってしまうのかと、驚かれる方も多いんですよね。手書きで遺言書を残される場合は、法的に有効かどうか、必ず専門家に確認してもらうことをお勧めします。
法務局の「自筆証書遺言書保管制度」も活用できる
2020年(令和2年)7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」をご存じでしょうか。法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言を保管してもらえる制度で、保管時に遺言書の形式チェックを受けられます。また、法務局に預けた遺言書は相続発生後の家庭裁判所での「検認手続き」が不要になるというメリットもあります。ただし形式チェックのみで、遺言の内容の有効性を保証するものではありませんのでご注意ください。
なお、遺言書に関する法令・制度は改正が行われることがあります。最新の情報は必ずご確認ください。
遺言を書いたほうが良いのはどんなケース?
「自分は普通の家庭だから遺言は不要かな」と思っていませんか?実はそんなことはないんです。以下のようなケースでは特に遺言書の作成をお勧めしています。
- 特定の人(子どもや配偶者)に特定の財産を渡したいと考えている方
- 再婚していて、前の婚姻関係の子どもがいる方(相続人が複雑になるケースです)
- 子どものいないご夫婦(親や祖父母などの直系尊属がいない場合は、兄弟姉妹も相続人になります。兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者にすべてを遺したい場合は遺言書が特に有効です)
- 事業を後継者に引き継ぎたいと考えている方
- お世話になった方や団体に財産を遺贈したい方
- 仲の悪い相続人がいて揉める可能性があると心配している方
- 不動産など分けにくい財産が多い方
「自分には当てはまらない」と思っていた方も、いくつか該当するものがあったのではないでしょうか。
遺言書に書けること・書けないこと
遺言書には、法的効力が認められる事項と、書いても法的効力が生じない事項があります。
| 書けること(法的効力あり) | 主な例 |
|---|---|
| 財産の分け方の指定 | 「自宅不動産は長男に相続させる」 |
| 特定の人への遺贈 | 「○○に預貯金の○割を遺贈する」 |
| 相続人の廃除・廃除の取消し | 虐待など特定事由がある場合 |
| 認知 | 婚外子の認知 |
| 祭祀主宰者の指定 | お墓・仏壇など祭祀財産を引き継ぐ人の指定(民法897条) |
| 遺言執行者の指定 | 「司法書士○○を遺言執行者に指定する」 |
一方、「仲良く暮らしてほしい」「家族みんなで助け合ってほしい」といった希望・お願いの言葉は、法的な効力を持ちません。ただし「付言事項(ふいごんじこう)」として遺言書に書き添えることで、ご家族への思いを伝えることは十分意味があります。残された家族への感謝の言葉や、財産の分け方の理由を書き添えた遺言書は、相続後のご家族の心の支えになることがありますよ。
「遺留分」には注意が必要です
遺言書で財産の分け方を自由に決められるとはいっても、法律で保護されている「遺留分(いりゅうぶん)」には配慮が必要です。遺留分とは、一定の相続人(配偶者・子・直系尊属)に認められた最低限の取り分のことです。なお、兄弟姉妹には遺留分は認められていません(民法1042条)。
たとえば、遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書いたとしても、他の相続人が遺留分を主張すれば、その分は渡さなければならない場合があります。遺言書を作成する際は、遺留分についても考慮した内容にすることが大切です。この点は少し複雑ですので、専門家への相談をお勧めします。
遺言書を作成する際の基本的な流れ
自筆証書遺言の場合の一般的なステップをご紹介します(ケースによって異なります)。
- 財産の棚卸し:不動産・預貯金・有価証券・生命保険などすべての財産を書き出す
- 相続人の確認:誰が相続人になるかを戸籍で確認する
- 分け方の検討:誰に何を渡したいかを決める(遺留分に注意)
- 専門家への相談:有効な遺言書にするため、司法書士等に内容を確認してもらう
- 遺言書の作成:全文・日付・氏名を自書し、認印または実印で押印する
- 保管方法の決定:自己保管、または法務局の保管制度を利用する
- 定期的な見直し:家族構成・財産状況の変化に応じて更新を検討する(※遺言の撤回・変更は意思能力のある間のみ可能です。できるだけ早めの対応をお勧めします)
「難しそう…」と感じた方もいるかもしれませんが、一つひとつ丁寧に進めていけば大丈夫です。当事務所でもご一緒にサポートしていますよ。
まずはお気軽にご相談ください
遺言書についてご不安なことがあれば、どうぞ一人で抱え込まないでください。星総合法務事務所では、新宿・渋谷エリアを中心に、皆さまの大切な手続きを丁寧にサポートしています。
司法書士【星総合法務事務所】
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よくある質問(FAQ)
Q1. 遺言書は何歳から書けますか?
満15歳以上であれば遺言書を作成することができます(民法961条)。「まだ若いから」と思っていても、いざというときに備えて早めに準備しておくことをお勧めします。遺言書は何度でも書き直すことができ、日付が新しいものが有効になります。
Q2. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがよいですか?
一概にどちらが良いとは言えませんが、確実性を重視するなら公正証書遺言が安心です。自筆証書遺言は手軽に作れる半面、書き方を誤ると無効になるリスクがあります。財産の内容や家族構成によって最適な方法が異なりますので、ぜひ専門家にご相談ください。
Q3. 遺言書がないと必ず揉めますか?
必ずしも揉めるわけではありませんが、遺言書がない場合は相続人全員の合意が必要な「遺産分割協議」が必要になります。仲の良いご家族でも、話し合いが長引いたり手続きが煩雑になったりすることがあります。遺言書があるだけで、残されたご家族の負担を大きく軽減できますよ。
Q4. パソコンで作成した遺言書は有効ですか?
自筆証書遺言の場合、財産目録以外の本文はすべて自筆(手書き)であることが要件です。本文をパソコンで作成したものは無効になります。ただし、公正証書遺言の場合は公証人が作成するため手書きの必要はありません。
Q5. 遺言書を書いた後、変更・撤回はできますか?
はい、できます。遺言書はいつでも全部または一部を撤回・変更することが可能です(民法1023条)。同じ事項について複数の遺言書がある場合は、日付が新しいものが優先されます。ただし、撤回・変更は意思能力のある間のみ有効です。認知症などで意思能力を失った後は変更ができなくなりますので、家族構成や財産状況が変わった際には早めに内容を見直すことをお勧めします。