経営承継円滑化法の遺留分特例とは?新宿の司法書士がわかりやすく解説

「会社を息子に継がせたいのに、他の子どもたちから遺留分を主張されたら困る…」
そんな不安を抱えながら、事業承継の準備を進めている経営者の方は多いのではないでしょうか?そうなんですね、実はこの「遺留分」の問題は、中小企業のオーナー経営者にとって事業承継の最大のネックになることがあるんです。
なお、法令は改正されることがありますので、実際の手続きにあたっては最新情報を必ずご確認いただき、専門家へのご相談を強くおすすめします。
そもそも「遺留分」って何ですか?
遺留分とは、一定の相続人(配偶者・子・直系尊属)に対して法律が保障している最低限の相続財産の取り分のことです。たとえば、遺言で「全財産を長男に相続させる」と書いたとしても、他の相続人はこの遺留分を主張することができます。これが遺留分侵害額請求と呼ばれるものです。
相続財産が自宅や預貯金だけなら話はまだシンプルです。でも、中小企業のオーナー経営者の場合、財産の多くが「自社株式」になっているケースが少なくありませんよね。
仮に自社株式の評価額が5,000万円、その他の財産が500万円しかないとしましょう。後継者である長男に株式をすべて贈与・遺贈したとき、二男・三男は遺留分を根拠に長男に対して金銭の支払いを求めることができます。長男がその資金を用意できなければ、最悪の場合、株式の一部を手放すことになりかねません。これでは会社の経営が揺らいでしまいますよね。
経営承継円滑化法が「遺留分の特例」を設けた理由
こうした問題を解決するために、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)は、一定の要件を満たす場合に「遺留分に関する民法の特例」を認めています。
この特例の核心は、後継者が先代経営者から自社株式等を承継する際に、遺留分の制約を受けずに議決権の過半数を安定的に確保できるようにすることです。慎重に設計された制度ですので、誰でも簡単に使えるわけではありませんが、要件を満たせば非常に強力な後ろ盾になります。
特例には大きく2種類あります。
| 特例の種類 | 概要 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 除外合意 | 自社株式等を遺留分算定の対象財産から除外する | 遺留分侵害請求のリスクをなくす |
| 固定合意 | 生前贈与した自社株式の評価額を合意時点の額に固定する | 後継者の努力による株価上昇分を遺留分計算から保護する |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「除外合意」とは何か
制度の仕組み
除外合意とは、先代経営者の生前に、後継者と推定相続人全員が一定の手続きを経ることで、自社株式等を遺留分算定の基礎となる財産から除外できる制度です。
簡単に言うと、「この株式は遺留分の計算に入れませんよ」と相続人全員で合意しておく仕組みです。これによって、後継者は遺留分侵害請求を受ける心配なく、事業継続に必要な株式を保有し続けることができます。
正しい手続きの流れ(順序が重要!)
除外合意を成立させるには、以下のステップをこの順番どおりに進める必要があります。順序を誤ると手続きが無効になる可能性がありますので、慎重に!確認しながら進めてください。
| ステップ | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| ① | 後継者と推定相続人全員で合意書を作成する | ― |
| ② | 合意日から1か月以内に経済産業大臣へ確認申請を行う | 合意日から1か月以内 |
| ③ | 確認書の交付を受けた日から1か月以内に家庭裁判所へ許可の申立てを行う | 確認書交付から1か月以内 |
「まず大臣に確認してから合意する」と思われがちですが、実際は「合意が先、大臣確認が後」です。この順序はとても重要なポイントですので、ぜひ覚えておいてください。
なお、各ステップの期限(1か月以内)は厳守が必要です。期限を過ぎると最初からやり直しになる可能性がありますので、余裕を持ったスケジュールで動き出すことをおすすめします。
個人事業主も利用できます
そうなんですね、除外合意は会社経営者だけの特権ではありません。合意時点で3年以上継続して事業を行っている個人事業主が後継者に事業用資産のすべてを贈与した場合にも利用できます。農業・飲食業・職人業など、様々な個人事業の承継場面で活用できる点は、意外と知られていないポイントです。
「固定合意」とは何か
制度の仕組み
固定合意とは、先代経営者から後継者へ生前贈与した自社株式について、遺留分算定の際の評価額を合意時点の価額に固定できる制度です。
「評価額を固定する」……これだけ聞くとピンとこないかもしれませんね。少し具体例で考えてみましょう。
なぜ「固定」が必要なのか
固定合意がない場合、遺留分の算定は相続開始時点(=先代経営者が亡くなった時点)の株価で行われます。
たとえば、贈与時に1株5万円だった株式が、後継者の懸命な経営努力によって相続開始時には1株20万円まで上昇していたとしましょう。この場合、遺留分の計算には上昇後の20万円が使われます。つまり、後継者自身の努力で生み出した価値が、遺留分侵害請求の計算に跳ね返ってきてしまうのです。これは後継者にとってあまりにも理不尽ではないでしょうか?
固定合意を使えば、この株価上昇分を遺留分の計算から切り離すことができます。後継者が一生懸命会社を育てるほど損をするという不条理な状況を回避できるわけです。後継者の経営意欲を守るうえでも、非常に重要な制度だと感じます。
固定合意の実務上の注意点
固定合意を利用する際には、合意時点の株式の時価を証明する書類が必要です。一般的には、税理士・公認会計士・弁護士などの専門家による評価証明が求められます。この評価作業が必要になるため、早めに専門家と連携して準備を進めることが大切です。
また、固定合意の効果はあくまで遺留分の計算上の評価額を固定するものであり、相続税の課税計算とは別の話になります。相続税については、固定合意の有無に関わらず、相続開始時点の時価が課税の基準となりますので、混同しないようご注意ください。
2つの合意を比較してみましょう
除外合意と固定合意は併用することも可能です。状況に応じて使い分ける、あるいは組み合わせるという選択肢もあります。いかがでしょう?
| 比較項目 | 除外合意 | 固定合意 |
|---|---|---|
| 目的 | 遺留分侵害請求を防ぐ | 株価上昇分を遺留分計算から外す |
| 対象 | 自社株式等(会社・個人事業主) | 自社株式(主に会社経営者向け) |
| 手続きの順序 | 合意→大臣確認(1か月以内)→家裁許可(1か月以内) | 同左 |
| 評価証明 | 不要 | 税理士等による時価の証明が必要 |
| 個人事業主の利用 | 可(3年以上継続の条件あり) | 主に会社経営者向け |
| 主な効果 | 遺留分算定の基礎財産から除外 | 合意時の評価額で遺留分を計算 |
| 併用 | 可能 | 可能 |
こうして並べると、2つの特例がそれぞれ異なる課題に対応していることがよくわかりますよね。
特例を利用するための要件まとめ
特例の利用には、共通して以下の要件が求められます。
- 先代経営者が存命中であること(死後には申請不可)
- 遺留分を有する推定相続人全員が合意に参加すること
- 合意後1か月以内に経済産業大臣へ確認申請を行うこと
- 確認書交付後1か月以内に家庭裁判所への許可申立てを行うこと
- 後継者が先代経営者から自社株式等の贈与を受けた者であること
「全員の合意」という点が実務上の最大のハードルになることが多いようです。相続人の中に一人でも反対者がいると特例は使えませんので、家族内のコミュニケーションを十分に行ったうえで進めることが大切です。事前に専門家を交えた話し合いの場を設けることをおすすめします。
事業承継を考えるなら、早めの行動がカギです
「まだ元気だから、承継のことは後でいいや」——そう思って先延ばしにしていませんか?
除外合意・固定合意はいずれも先代経営者の存命中にしか手続きできません。突然の病気や事故で判断能力を失ってしまうと、この制度は使えなくなってしまいます。また、株価の評価額を固定するという性質上、会社の業績が上がる前に手を打っておいたほうが有利になるケースもあります。
「いつかやろう」ではなく、「今できることから始める」という姿勢が、円滑な事業承継への近道です。ちょっとした疑問でも、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。新宿駅南口から徒歩7分の星総合法務事務所では、事業承継に関するご相談を丁寧にお聞きしています。
まずはお気軽にご相談ください
経営承継円滑化法の遺留分特例についてご不安なことがあれば、どうぞ一人で抱え込まないでください。星総合法務事務所では、新宿・渋谷エリアを中心に、皆さまの大切な手続きを丁寧にサポートしています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 除外合意と固定合意は、どちらか一方しか使えないのですか?
いいえ、両方を組み合わせて使うことができます。除外合意で遺留分侵害請求そのものを防ぎつつ、固定合意で株価上昇分も遺留分計算から保護するという形で併用するケースもあります。どちらが適しているか、あるいは両方使うべきかは状況によって異なりますので、専門家へのご相談をおすすめします。
Q2. 相続人全員の合意が必要とのことですが、一人でも反対したらどうなりますか?
推定相続人の中に一人でも合意しない方がいる場合は、特例を利用することができません。全員の同意が絶対条件です。家族間でしっかりと話し合いの場を設け、場合によっては専門家を交えて調整することが重要です。
Q3. 個人事業主でも除外合意は使えますか?
はい、利用できます。ただし「合意時点で3年以上継続して事業を行っていること」「後継者に事業用資産のすべてを贈与していること」などの要件があります。会社組織でなくても使える制度ですが、要件の確認は慎重に行ってください。
Q4. 手続きの期限はどのくらいですか?
まず推定相続人全員との合意書を作成し、その合意日から1か月以内に経済産業大臣へ確認申請を行います。確認書の交付を受けたら、その日からさらに1か月以内に家庭裁判所へ許可の申立てを行う必要があります。期限は非常にタイトですので、合意前から専門家と連携して準備を進めることを強くおすすめします。
Q5. 先代経営者が亡くなった後でも特例の手続きはできますか?
できません。除外合意・固定合意はいずれも先代経営者が存命中にのみ手続きが可能です。経営者が亡くなった後ではこの特例を利用することはできませんので、元気なうちに早めに準備を進めることを強くおすすめします。