相続法改正で配偶者の権利はどう変わった?司法書士がわかりやすく解説

「夫(妻)が亡くなったら、今の家に住み続けられるの?」——そう不安を感じたことはありませんか?
配偶者を亡くした後の生活再建は、精神的にも大変な時期です。そこに加えて「相続の手続き」「財産の分け方」「今後の住まい」といった問題が一気に押し寄せてくる。そうなんですね、こうしたご相談は私たち星総合法務事務所にも本当に多く寄せられています。
実は、こうした配偶者の不安を和らげるために、相続法は大きく改正されています。特に「配偶者の居住権を守る」という視点から、新しい制度が設けられました。この記事では、相続法改正の中でも特に重要な「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」について、難しい法律用語をなるべく使わずにわかりやすく解説します。
この記事を読めば、「相続が起きたとき、配偶者がどんな権利を持てるのか」がスッキリ理解できますよ。
そもそも相続法改正って何が変わったの?

相続に関するルールは、民法という法律に定められています。この民法の相続に関する部分(相続法)は、1980年(昭和55年)の改正から約38年ぶりに大きく改正されました。2018年(平成30年)に改正法が成立し、複数の段階に分けて順次施行されてきました。
今回の改正では、社会の変化、特に「高齢化」「家族のあり方の多様化」を背景に、これまで十分に保護されていなかった配偶者の権利が大幅に強化されています。具体的には以下のような改正がありました。
| 改正の主なポイント | 概要 |
|---|---|
| 配偶者居住権の新設 | 自宅に住み続ける権利を新たに創設 |
| 配偶者短期居住権の新設 | 相続手続き中の短期間の居住を保護 |
| 自筆証書遺言の方式緩和 | 財産目録はパソコン作成可能に |
| 遺産分割前の預貯金払戻し | 生活費・葬儀費用への対応が可能に |
| 特別の寄与の制度 | 長男の妻など相続人外の貢献を考慮 |
| 遺留分制度の見直し | 遺留分侵害額請求権として金銭化 |
このうち本記事では、特に「配偶者の居住権」にフォーカスして詳しく解説していきます。なお、法改正の内容は随時更新される可能性がありますので、最新情報は必ずご確認ください。
配偶者の居住権を守る2つの新制度

配偶者短期居住権とは?
「配偶者短期居住権」は、その名の通り、比較的短い期間にわたって配偶者が自宅に無償で住み続けられる権利です。
たとえばこんなケースを想像してください。夫が亡くなり、残された妻は自宅で暮らし続けたい。でも相続人の間で「誰がどの財産を引き継ぐか」の話し合い(遺産分割協議)がまとまるまでには、数ヶ月かかることも珍しくありません。その間、「家から出て行ってください」となってしまったら困りますよね。
そこで、遺産分割によって建物の帰属が確定した日、または相続開始から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日まで、配偶者がその家に無償で住み続けられる権利として「配偶者短期居住権」が認められました。この制度のおかげで、住まいの確保という最低限の生活基盤が守られるようになったんですね。
配偶者居住権とは?
「配偶者居住権」は、配偶者が終身にわたって(または設定した期間)、自宅に無償で住み続けられる権利です。これが今回の改正の目玉ともいえる制度です。
従来の問題点として、たとえば自宅(評価額2,000万円)と預貯金(2,000万円)の計4,000万円を、配偶者と子1人で2分の1ずつ相続するケースを考えてみましょう。従来の制度では、配偶者が自宅を相続しようとすると、持分全体の評価額2,000万円に相当する財産を取得することになり、残りの遺産(預貯金)はほとんど受け取れない、という事態が起きていました。老後の生活費となるはずのお金が手元に残らないわけです。
配偶者居住権の新設によって、自宅の所有権と居住権を分けて考えることができるようになりました。配偶者は「居住権(住む権利)」を取得し、子が「所有権(所有する権利)」を取得することで、配偶者は自宅に住み続けながら、かつ生活費となる預貯金も相続できるようになったわけです。いいですね!これは配偶者の生活保護という意味で、非常に大きな改正だと思いませんか?
配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い
2つの制度は似ているようで、目的・期間・成立要件が大きく異なります。整理しておきましょう。
| 項目 | 配偶者短期居住権 | 配偶者居住権 |
|---|---|---|
| 目的 | 相続手続き中の短期的な住まいの確保 | 長期的・終身の住まいの確保 |
| 居住期間 | 遺産分割確定日または相続開始から6ヶ月、いずれか遅い日まで | 原則として終身(配偶者が亡くなるまで) |
| 費用負担 | 無償(固定資産税等の通常の必要費は配偶者負担) | 無償(通常の必要費は配偶者負担) |
| 成立要件 | 相続開始時点で被相続人所有の建物に居住していた | 遺産分割・遺贈・死因贈与により取得 |
| 登記 | 登記不可(登記制度なし) | 登記が必要(対抗要件) |
| 施行日 | 2020年4月1日 | 2020年4月1日 |
この表を見ていただくと、配偶者短期居住権は「自動的に発生する保護」であり、登記という制度自体が設けられていません。一方、配偶者居住権は「遺産分割や遺言によって設定する権利」で、取得後は登記が必要という点が大きな違いです。慎重に!配偶者居住権は遺言書の書き方によっても大きく変わりますので、事前の専門家への相談が重要です。
実際の相続でどう活用するの?具体的なポイント
配偶者居住権を実際に活用する場面では、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
①遺言書への記載が有効
配偶者居住権を確実に取得させたい場合は、被相続人(亡くなる方)が生前に遺言書を作成し、配偶者に配偶者居住権を「遺贈する」旨を記載しておく方法が確実です。「もしものとき、パートナーに安心して住み続けてほしい」と思うなら、遺言書の準備が大切ですね。
②遺産分割協議での設定
遺言書がない場合でも、相続人全員の遺産分割協議の中で「配偶者が配偶者居住権を取得する」ことを合意すれば設定できます。ただし、全員の合意が必要なため、話し合いが難航するケースも少なくありません。
③登記の手続きが必要
配偶者居住権を取得したら、登記(不動産登記) を行うことが重要です。登記をしなければ、第三者(不動産を売却された相手など)に対して「私にはここに住む権利があります」と主張できません。星総合法務事務所では、この不動産登記の申請手続きも丁寧にサポートしています。
④税務上の評価にも注意
配偶者居住権は相続税の計算にも関係します。居住権の評価額は、建物の評価額・残存耐用年数・配偶者の年齢などを基に計算されます。税務の部分については税理士との連携が必要になることもありますので、ご相談の際にお気軽に状況をお聞かせください。
相続の手続き全体の流れ
配偶者居住権の問題だけでなく、相続全体の手続きの流れも把握しておくと安心です。目安として知っておきましょう(ケースによって異なります)。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 相続開始 | 被相続人の死亡 | ― |
| 相続人・相続財産の調査 | 戸籍収集・財産調査 | 1〜2ヶ月 |
| 遺言書の確認 | 遺言書の有無の確認・家裁での検認(必要な場合) | 〜1ヶ月 |
| 遺産分割協議 | 相続人全員で話し合い | 1〜数ヶ月 |
| 各種名義変更・登記 | 不動産登記・預貯金の払戻しなど | 1〜2ヶ月 |
| 相続税の申告・納付 | 相続開始から10ヶ月以内 | 〜10ヶ月以内 |
「こんなにやることがあるの?」と思われた方もいるかもしれませんね。そうなんです、相続手続きは思いのほか複雑で、特に不動産が絡む場合は専門家のサポートが心強いです。新宿駅南口から徒歩7分の星総合法務事務所では、初回相談から丁寧に対応しています。
2024年4月施行の相続登記義務化も要チェック
配偶者居住権の話と合わせて、ぜひ知っておいていただきたいのが「相続登記の義務化」です。2024年4月1日から、不動産を相続した場合には相続を知った日から3年以内に登記申請することが義務となりました。正当な理由なく申請しなかった場合、10万円以下の過料(行政上のペナルティであり、刑事罰とは異なります)の対象になります。
「ずっとそのままにしていた実家の名義…」という方も少なくありません。いかがでしょう?もし心当たりがあれば、早めに動かれることをおすすめします。なお、この義務化は2024年4月1日以前に発生した相続についても対象となる場合がありますので、最新情報の確認を怠らないようにしましょう。
新宿で相続の相談ができる司法書士事務所として
星総合法務事務所は、新宿駅南口から徒歩7分という好立地で、相続に関わるさまざまな手続きをサポートしています。遺産分割協議書の作成・不動産の相続登記・配偶者居住権の設定登記など、相続手続きに欠かせない業務を、丁寧に、わかりやすく対応しています。
「難しそうで何から始めればいいかわからない」「家族でもめないか不安」「自分のケースに配偶者居住権は使えるの?」——そんな疑問でも、どうかお気軽にご連絡ください。6番出口を出てすぐという便利な立地で、新宿周辺にお住まいの方・お勤めの方にも通いやすい環境を整えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 配偶者居住権は必ず設定しなければなりませんか?
いいえ、配偶者居住権は必ず設定しなければならないものではありません。遺産分割協議や遺言の内容によって設定するかどうかを決めるものです。配偶者の生活状況・資産状況・他の相続人との関係などを踏まえて、設定するかどうかを慎重に検討されることをおすすめします。
Q2. 配偶者短期居住権はいつまで認められますか?
配偶者短期居住権は、「遺産分割によって建物の帰属が確定した日」または「相続開始から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日まで認められます。つまり最低でも6ヶ月は、自宅に無償で住み続けることができます。
Q3. 配偶者居住権を第三者に譲渡したり、賃貸に出すことはできますか?
配偶者居住権は、第三者への譲渡はできません。ただし、建物の所有者の同意があれば、第三者に使用・収益させること(賃貸など)は可能とされています。権利の性質上、個人的な居住保護を目的としているため、譲渡は認められていない点に注意が必要です。
Q4. 相続登記の義務化はいつから始まりましたか?
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。2024年4月1日以前に相続した不動産についても対象となる場合があります。放置してしまうと10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象になりますので、早めの対応が大切です。
Q5. 司法書士と弁護士、相続の相談はどちらにすべきですか?
相続人同士に争いがなく(または争いが起きる前の段階で)、遺産分割協議書の作成・相続登記・戸籍収集などの手続きサポートが主な目的であれば、司法書士にご相談いただけます。一方、相続人間に深刻なトラブル・紛争が発生している場合は、弁護士に相談されるのが適切です。なお、星総合法務事務所は簡裁代理認定司法書士(第101248号)として、140万円以下の民事紛争についても対応可能です。