高齢者の不動産売却で困ったら?司法書士が教える家族信託という選択肢

高齢者の不動産売却で困ったら?司法書士が教える家族信託という選択肢

「親が認知症になってきたけど、実家を売りたい…どうすればいいの?」

そんなご相談、最近ほんとうに増えています。高齢化が進む日本では、親御さんの不動産売却をめぐって、ご家族が頭を抱えるケースが後を絶ちません。「委任状を用意しているから大丈夫」と思っていたら、いざ売買の手続きで止まってしまった——そういう経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、高齢者の不動産売買契約に潜むリスクと、事前に備えておくことで問題を回避できる「家族信託」という制度について、わかりやすくご説明します。読み終わるころには、「何をすべきか」がきっと見えてくると思います。

新宿駅南口から徒歩7分の星総合法務事務所では、こうしたご相談を日々お受けしていますので、少しでも不安を感じたらぜひ最後まで読んでみてください。

目次

意思能力がなければ、契約は「無効」になる

まず、法律の大前提をお伝えしますね。「意思能力のない人が行った法律行為は無効である」——これは民法の基本中の基本です。

わかりやすく言うと、認知症などで判断力を欠いた状態の方が不動産売買契約を結んでも、その契約は法的に無効になる可能性があります。そうなんですね、問題はそのリスクを「取引の相手方(買主側)が負う」という点にあります。

買主にとってみれば、お金を払って不動産を手に入れたつもりが、後から契約無効を主張されるかもしれない——これは非常に大きなリスクです。だからこそ、不動産取引の現場では、判断力の確認が非常に厳格に行われます。

司法書士が「本人確認と意思確認」を行う理由

実際の不動産取引の決済現場では、司法書士が必ず立ち会います。そこで行われるのが、契約当事者本人の確認と、売却についての意思確認です。

この確認が取れない場合、司法書士は登記を実行しません。これは取引全体を守るためのセーフガードであり、司法書士として欠かすことのできない職責です。

「ちゃんと実印が押された委任状があるから問題ないでしょう?」と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。委任状に実印が押印されていたとしても、売買契約締結の時点で本人に意思能力が存在しなければ、やはり契約は無効になりえます。委任状を作成した時点で判断力があったとしても、売買契約を結ぶ段階で判断力を失っていれば、その委任状は有効に機能しないのです。慎重に!と伝えたくなる部分ですね。

よくある「委任状を用意していた」ケース

実際によくある相談事例をご紹介します。

不動産を所有する高齢の父親が、まだ判断力のあるうちに長男へ「不動産を売っていい」と自筆の委任状を渡していたケースです。家族としては「準備万全」のつもりだったわけですが、いざ売買の手続きが進む段階で、父親がすでに判断力を欠く状態になっていた——という事態が起きることがあります。

こうなると、たとえ委任状があっても、売買契約締結の時点での意思能力が問題になります。司法書士としても、本人の判断力を確認できなければ登記には進めません。

「判断力があるうちに委任状を作っておけばよかった…ではなくて、そもそも別の準備が必要だったんですね」——これが多くのご家族に気づいていただきたいポイントです。

成年後見制度という選択肢、でも…

このような場合の解決策として、「成年後見制度」があります。家庭裁判所が成年後見人を選任し、その後見人が本人に代わって法律行為を行う制度です。

不動産の売却も、成年後見人を通じて行えば法的に有効な取引ができます。ただ、ご家族の方に正直に言うと、手続きが複雑で時間もかかるというのが実情です。また、一度後見人が就任すると年に一度程度の定期報告が裁判所に義務付けられ、場合によっては後見監督人が選任されることもあります。継続的な管理負担が発生するため、柔軟な対応が難しくなる面もあります。

「不動産を売るためだけに、わざわざ裁判所の手続きを…」と感じるご家族の気持ちも、そうなんですね、よくわかります。だからこそ、判断力のあるうちに別の方法で備えておくことが大切なのです。

成年後見制度と家族信託の比較

比較項目成年後見制度家族信託
利用開始のタイミング判断力低下後でも可能判断力があるうちに設定が必要
手続きの主体家庭裁判所家族間の契約(公証役場推奨)
不動産売却の可否可能(後見人が対応)可能(受託者が対応)
裁判所の関与継続的な監督あり(定期報告義務・後見監督人選任の場合あり)原則不要
身上監護(医療・介護手続き)対応可能対応不可(別途任意後見等が必要)
柔軟な財産管理制限あり設定内容に応じて柔軟
費用の目安申立費用+後見人報酬(継続発生)設定時の費用(主に初期一回)

※費用・手続きの詳細はケースによって異なります。最新情報は専門家にご確認ください。

家族信託という「先手を打つ」準備

そこで、元気なうちに備えておく方法として注目されているのが「家族信託」です。

家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族(受託者)に託し、一定の目的のために管理・処分してもらう契約です。「将来、判断力がなくなっても、自分の意思に沿った形で財産を動かしてほしい」という希望を、事前に契約として形にしておける制度です。

判断力のあるうちに準備しておくことで、認知症になった後も本人の意思を反映した財産管理・処分が可能になります。いいですね!制度を上手に使えば、家族の不安もずいぶん和らぎます。

ただし、家族信託はあくまで財産管理に特化した制度です。後述しますが、医療・介護に関わる手続きはカバーされませんので、その点は正しく理解しておくことが大切です。

家族信託で不動産売却はどうなる?具体的な流れ

先ほどの「高齢の父親と長男」の事例で、家族信託を活用するとどうなるか、具体的に見てみましょう。

ステップ①:家族信託契約の締結

まず、父親(委託者)と長男(受託者)の間で、売却予定の不動産を信託財産とする家族信託契約を結びます。例えば「父が施設に入居して自宅が空き家になった場合は売却する」という内容を盛り込みます。契約書は公正証書での作成を強くお勧めします。

ステップ②:不動産名義の移転

信託契約に基づき、自宅の名義が信託財産として長男に移転します。ただし、売却代金の受け取りは父親(受益者)です。名義は変わりますが、財産の「利益」はあくまで父親のものです。

ステップ③:売却が必要になったとき

父親の判断力がなくなっていても、長男は信託財産として一人で売買契約を締結できます。裁判所の許可も不要です。司法書士の本人確認も、受託者である長男との確認で進みます。

ステップ④:売却代金の管理

売却代金は父親の収入となりますが、これも家族信託の中で長男が管理できます。父親の生活費や施設費用の支払いも、長男がスムーズに対応できます。

家族信託設定に必要な主な書類の目安

書類内容
信託契約書公正証書での作成を強く推奨
不動産登記事項証明書信託財産となる不動産の確認
固定資産評価証明書登録免許税の算出に必要
委託者・受託者の本人確認書類運転免許証・マイナンバーカードなど
印鑑証明書公証役場での手続きに必要

※必要書類はケースによって異なります。事前に専門家へご確認ください。

家族信託を使うときの注意点

家族信託は非常に便利な制度ですが、万能ではありません。いくつか押さえておきたい注意点があります。

①元気なうちでないと設定できない
家族信託は、委託者(財産を託す人)に意思能力がある段階でなければ契約できません。「認知症になってから準備しよう」では手遅れになりますので、判断力があるうちに動くことが大切です。

②身上監護(医療・介護の手続き)はカバーされない【重要】
これは多くの方が見落としがちなポイントです。家族信託の受託者には、医療行為への同意・介護施設への入所手続き・介護サービス契約の締結といった「身上監護」の法的権限は与えられていません。実際の生活では家族の立場で対応できる場面も多いですが、法的な権限として持たせたい場合は、任意後見制度との併用を検討することをお勧めします。「財産管理は家族信託で、身上監護は任意後見で」という二段構えの設計も有効なアプローチです。

③信頼できる受託者が必要
財産を管理する受託者(通常は家族)には、高い誠実さと責任感が求められます。また、受託者が先に亡くなった場合の対応なども、契約時に考慮しておく必要があります。

④税務・相続の影響を確認すること
家族信託は税務上の取り扱いが複雑な面もあります。設定内容によっては贈与税や相続税への影響が出る場合もありますので、税理士との連携が重要です。最新の税制・法令については必ずご確認ください。

⑤専門家への相談が不可欠
信託契約書の内容が不十分だと、後々トラブルになることがあります。家族間だけで判断せず、必ず司法書士などの専門家に相談して契約書を作成することをお勧めします。

「まだ元気だから大丈夫」が一番危ない

当事務所に相談に来られる方の中には、「親はまだ元気だから…」とおっしゃりながらも、すでに少し物忘れが進んでいるケースがあります。家族信託に限らず、老後の財産管理や不動産処分の準備は、「必要になってから」では遅いことが多いのです。

「元気なうちに利用する」ことが、家族信託の一番大切なポイントです。判断力があるうちに準備しておくことで、将来認知症になっても本人の希望通りに財産を動かせるようになります。

「まだ先の話」ではなく、「今が準備のタイミング」——そう思っていただけたなら、まずはお気軽にご相談ください。新宿駅南口から徒歩7分、都営大江戸線・京王新線の新宿駅6番出口からは徒歩2分のところに、星総合法務事務所があります。難しい手続きも、一緒に考えましょう。

まずはお気軽にご相談ください

高齢者の不動産売却や家族信託についてご不安なことがあれば、どうぞ一人で抱え込まないでください。星総合法務事務所では、新宿・渋谷エリアを中心に、皆さまの大切な手続きを丁寧にサポートしています。

司法書士【星総合法務事務所】
📍 東京都渋谷区代々木2丁目20番2号 美和プラザ新宿501
📞 TEL:03-6709-2916
🚶‍♂️ 新宿駅南口から徒歩7分
🚶‍♂️ 京王新線・都営大江戸線 新宿駅6番出口から徒歩2分(6番出口を出てすぐです!)
🌐 https://hoshi-office.com/

よくある質問(FAQ)

Q1. 高齢の親が認知症でも不動産は売れますか?

判断力(意思能力)を欠いた状態では、本人名義のままでの売買契約締結は困難です。この場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てるか、事前に家族信託を設定しておく方法があります。判断力があるうちに家族信託を利用しておくと、認知症になった後も受託者(信頼できる家族)が売買手続きを進められます。

Q2. 委任状があれば親の代わりに不動産を売れますか?

委任状があっても、売買契約締結の時点で本人に意思能力がなければ契約は無効になる可能性があります。実際の取引では司法書士が本人の意思確認を行うため、判断力を欠いている場合は手続きが止まることがあります。事前の家族信託設定が有効な対策です。

Q3. 家族信託と成年後見制度はどう違いますか?

家族信託は判断力があるうちに家族間で設定する「事前の準備」、成年後見制度は判断力が低下した後に裁判所が関与する「事後的な保護」という違いがあります。家族信託は柔軟な財産管理が可能ですが、医療・介護手続きの身上監護権は含まれません。成年後見は身上監護にも対応できますが、継続的な裁判所への定期報告が義務付けられます。

Q4. 家族信託を設定すれば成年後見は一切不要になりますか?

財産管理の目的に限れば、家族信託で対応できるケースが多いです。ただし、家族信託には医療同意や施設入所手続きなど「身上監護」の権限は含まれません。医療・介護面での法的権限も必要な場合は、任意後見制度との併用を検討することをお勧めします。個々の状況によって最適な組み合わせが異なりますので、専門家へのご相談が一番の近道です。

Q5. 家族信託を設定するにはいくらかかりますか?

費用はケースによって大きく異なります。信託財産の内容・規模、公正証書作成の有無などによって変わり、司法書士報酬・公証役場費用・登録免許税などが発生します。正確な費用については、ぜひ一度ご相談ください。

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