消滅時効にかかった債権の支払督促

相談者のYさんは、O債権回収会社から支払督促を出されました。Yさんは、2週間以内に異議を出さなければ強制執行されてしまうと考え、法律相談をする前に、異議申立書の「分割払いを希望します」にチェックを入れ、月々の支払額を15,000円と記入して提出していました。異議申立てにより、通常訴訟へ移行してからも、期日呼出状に同封されていた答弁書に月々15000円ずつ支払う旨記載して提出していました。

Yさんが当職に相談にいらしたのは、口頭弁論期日の10日前のことでした。Yさんから詳しく事情を聴き、持参したO債権回収会社からの「法的措置予告通知」及び「支払督促」によると既に時効にかかった債権の支払い請求であることがわかりました。Yさんは、既に異議申立てと答弁書に分割で支払う旨記載して提出済であるため、債務承認が問題となりそうでした。

そこで、まずO債権回収会社に対して、当職から内容証明郵便で消滅時効の意思表示とともに権利濫用や信義則違反等を主張し、債務不存在証明書の交付を要求する旨通知しました。同時に、答弁書を再提出して、提出済の答弁書を撤回するとともに、時効援用する旨主張しました。

その結果、訴訟は、第一回期日に取り下げられ、O債権回収会社から債務不存在証明書も送られてきました。

 

 

忘れた頃の差押え予告通知

 債務者は、貸金業者との間で借入と返済を繰り返してきたが何等かの事情で
支払を停止していたケースです。
 一般に貸金業者との取引停止から5年以上経過している場合は、消滅時効を
検討します。但し、貸金業者が判決等の債務名義を取得している場合は、時効
期間は10年になりますので注意が必要です。
 一部の貸金業者は、すでに消滅時効にかかった債権の取り立てのために差押
予告と題する通知を送りつけ、連絡のあった債務者に和解をせまったり、突然
債務者の自宅を訪問して債権額の一部の支払をさせて消滅時効の主張を封じる
事実づくりをするケースがあります。
また、訴訟手続きを利用して消滅時効にかかった債権を請求してくる貸金業者
もあります。
 このように長年支払っていなかった債務の返済を迫られた場合には、最後に
借入や返済をしたのはいつなのか確認する必要があります。この最後の取引日
が5年以上前で債権者が債務名義を取得していなければ債権が消滅時効により
消滅している可能性が高いと考えられます。
 なお、債務者の中には、消滅時効期間経過後に貸金業者からの請求に応じて
支払をしてしまうことがありますが、債務者の無知に付け込んで支払わせる等
支払をした事情によっては貸金業者に対して消滅時効を援用することができる
とした裁判例もありますのであきらめずに相談してください。

時効完成後の一部弁済

時効完成後の一部弁済は、時効中断事由の債務承認にあたるため、仮に
時効完成を知らずに一部弁済したとしても、その後に時効援用できない
ことは確定した判例理論です。
しかし、債務者の無知や畏怖に乗じて甘言を弄して一部弁済させた場合
、債務者の無知に乗じて欺瞞的な方法を用いて一部弁済を促したり、取
立行為が違法な場合など下級審の判例には信義則上援用権を喪失させる
事情に当たるとはいえないとしたものもあります。つまり時効完成後の
一部弁済の後でも時効援用できる場合があるということです。
最終取引から5年以上経過した借金の督促があったら、まず時効援用が
できないか検討することをおすすめします。

保証人と消滅時効

通常は、主たる債務に時効中断が発生すると保証債務にも効力は及ぶため、

保証債務の時効が完成することはありません。

しかし、主たる債務の消滅時効が完成した場合には、主債務者が消滅時効を

援用しないときでも、保証人が主債務者の消滅時効の援用をすることが可能

です。この場合、主たる債務は時効により消滅し、附従性により保証債務も

消滅することになります。

長期間支払をしていなかった債務について、債権者から請求がなされた場合

には、慌てずに消滅時効について検討する必要があります。

 

時効の中断について

時効の中断とは、時効の進行中に中断事由が発生した場合に、それまで経過した期間を

無意味にすることを言います。

時効の中断事由には、「請求」「差押え、仮差押え又は仮処分」「承認」があります。

ここでの「請求」とは、訴え提起などの「裁判上の請求」「支払督促」「和解申立て」

「破産手続き」など法的手続きによる請求をいいますので、法的手続外の請求は「催告」

として区別されています。

つまり、貸金業者による請求書の送付や訴訟予告通知などはこの「催告」にあたります。

この「催告」は、6か月以内に時効中断事由となる裁判上の「請求」等をしなければ、

時効中断の効力は発生しません。

なお、「催告」をすることにより、6か月は時効期間が延長されることになりますが、

延長されるのは一度であり催告を繰り返しても、時効期間の再延長はできません。

貸金業者から突然過去の借金の請求書や訴訟予告通知が何度も送られてくるような場合は、

実は時効期間が過ぎているかもしれません。

 

借金の消滅時効

長期間返済していない借金について、消費者金融などからある日突然、請求がなされることがあります。

最後に返済または借入をしてから5年以上経過している場合、すでに時効かもしれません。

慌ててすぐに支払ったり、業者と連絡をとる前に、消滅時効の完成を検討する必要があります。

ご自身で判断が付かない場合には、ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。